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役員賠償保険
【第1回】役員賠償責任保険(D&O保険)とは?中小企業の経営者が知るべき個人リスクと基本の仕組み
「役員賠償責任保険(D&O 保険)は、上場企業が加入するもの」
そう思っている中小企業の経営者や役員は少なくありません。
実際、大手損保のアンケートなどを見ると、日本の中小企業における D&O 保険の加入率は1〜2 割程度と推測されており、上場企業に比べてまだ低いのが現状です。
しかし近年は、法改正や社会の意識変化に伴い、非上場の中小企業でも取締役が個人として高額な損害賠償を請求されるケースが増えていると指摘されています。
本記事では、経営者なら最低限知っておきたい
- 役員個人の法的リスク
- 万が一の防衛策となる役員賠償責任保険(D&O 保険)の仕組み
を、専門用語を噛み砕いて客観的に解説します。
1. 会社と「役員個人」の責任の違いとは?
多くの経営者は、
「会社が訴えられても、会社が倒産しない限り自分の資産は安全だ」
と考えがちです。
確かに、通常の取引における債務や、現場のミスによる賠償は、会社という「法人」が責任を負うのが大原則です。
しかし、経営判断のミスや労務問題などが発生した場合、会社法において役員は「個人」としての責任を追及される仕組みになっています。その根拠となるのが、すべての取締役に課せられている「善管注意義務(善良な管理者の注意義務)」です。
中小企業であっても、役員がこの義務を怠って会社や第三者に損害を与えたと判断された場合、会社法上の規定に基づき、役員個人が損害賠償の義務を負うことになります。
特に、以下の 2 つのケースは経営陣としての責任範囲を大きく左右します。
会社に対する責任(会社法 423 条)
経営ミスなどで会社に損害を与えた場合、株主などから訴えられます。
- 中小企業での発生確率は低く見える
- しかし、親族間や少数株主間で泥沼の訴訟に発展するケースが後を絶たない
第三者に対する責任(会社法 429 条)
役員に「故意または重大な過失」があった場合、取引先や従業員などの第三者に対して直接責任を負います。
分かりやすく言うと、「経営陣としての重大な職務怠慢」に対するペナルティです。
2. 「会社が守ってくれる」が通用しない 3 つの盲点
万が一、役員個人が訴えられた場合、
「会社の資金から弁護士費用を出したり、賠償金を肩代わりしたりすればいい」
と考えるかもしれません。
しかし実際には、会社が役員をカバーできない、あるいはカバーしてはいけない法的な盲点が 3 つあります。
① 定款による免除の限界
会社の定款に「役員の責任免除規定」を設けている企業も多いですが、これには法律上の限界があります。
役員に「故意や重過失」があるとみなされた場合は、定款にどれだけ有利な規定があっても、賠償責任を免除することはできません。
② 退任後の損害賠償請求
役員を退任して数年が経過していても、在任中の行為(当時の決算や労務管理など)に対して訴訟を起こされることがあります。
「もう辞めたから会社とは関係ない」
と思っていても、過去の責任が個人を追いかけてくるリスクがあるのです。
③ 会社が倒産した場合
最悪のケースとして、会社自体が経営破綻した場合、破産管財人から経営陣個人に対して、
場合によっては「放漫経営だった」などとして、責任追及が行われる
ことがあります。
この場合、後ろ盾となる会社はもう存在しないため、個人の私財(自宅や預貯金)を投げ打って賠償金を支払わざるを得なくなり、「払えない」では済まされない事態に陥ります。
3. 役員賠償責任保険(D&O 保険)の標準的な仕組み
こうした「役員個人の私財」が脅かされるリスクに対し、最終的な防衛ラインとなるのが役員賠償責任保険(D&O 保険)です。
この保険は、役員が業務執行に起因して損害賠償請求を受けた場合に、役員個人(または会社)が被る損害をカバーする仕組みになっています。
標準的な D&O 保険では、主に以下の 2 つの費用が補償されます。
① 法律上の防衛費用(弁護士費用など)
裁判を起こされた場合、役員側に落ち度がなく無実であったとしても、争うためには膨大な弁護士費用や着手金が必要です。
D&O 保険は、この「初期段階の防衛費用」をカバーするため、不当な訴えに対しても毅然と戦うことができます。
② 損害賠償金・和解金
万が一、裁判で敗訴して賠償命令が出た場合の賠償金や、裁判を早期に決着させるための和解金が保険金から支払われます。
また、実務上の大きなメリットとして、法人として導入しやすい税務上の特徴もあります。
法改正により、現在の中小企業向けの標準的な D&O 保険では、保険料を会社負担として全額損金算入(経費処理)することが認められています。役員個人の給与課税扱いにならないため、企業として非常に導入しやすい仕組みになっています。
4. まとめ:まずは自社の経営リスクを知ることから
近年は法や規制が厳しくなり、ハラスメント対策や情報セキュリティなど、経営陣が背負う法的リスクは年々複雑化しています。
役員賠償責任保険(D&O 保険)は、決して大企業だけのものではありません。
むしろ、
- 経営陣の数が限られており
- 一人の役員の判断が会社全体、そして役員自身の生活に直結しやすい
中小企業にこそ、必要な「経営の盾」と言えます。
自社の今の体制でどのようなリスクがあるのか、また一般的な中小企業における保険料の相場がどれくらいなのか、まずはプロの客観的な視点からリスクを診断してみてはいかがでしょうか。
- 「うちの業種だとどんなリスクがある?」
- 「具体的な保険料の目安は?」
など、気になる点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。